刺繍の杜 オランダ生活記

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 アパートの人たち-その2-

スージーはアパートの中で一番の仲良しです。始めて会った時はその怖そうな顔と、愛想の悪さに近寄りがたいものがあったのですが、話してみると全く違うのです。

17歳でアイントホーヘン駅の切符売りの窓口係として働き始め、顧客係のマネージャーで定年退職するまでずーっと駅で働き続けました。

英語も上手なので、私はわからない事があるとすぐに彼女のところに飛んで行きます。彼女が22歳の時にお父さんが亡くなり、それからお母さんが92歳で亡くなるまで、お母さんの面倒を見てきたのです。

今は一人暮らしですが、毎日忙しい生活で彼女の手帳は予定が一杯書き込まれています。地域のコーラスグループに所属し、毎週の練習を欠かしません。

「もう25年も歌ってるの、私が一番年上なのよ」

と嬉しそうに、誇らしげに教えてくれました。毎年一度の発表会も終わったところです。

亡くなった親友のお母さんを訪ねて、電車で1時間半の距離を月に2回通います。その他、「甥がノルウェーに6週間の出張に行くから」とスキポール空港まで見送りに行ったり、アムステルダムの美術館を訪ねたり、本当に良く動きます。

「あなたはいつも家にいるのね。車が全く動いてないから心配してるのよ。元気にしてるの?」

などとよく声をかけてくれます。

日本のニュースも私より早く、そして良く知っています。雅子様のお名前が覚えられなくて紙に書いてキッチンのドアの後ろに張って、その話題になるとキッチンに見に行きます。日本のことに興味を持ってくれることがとても嬉しいです。

掃除が大好きで家の中はいつでもぴかぴかに磨かれています。

「私は小さな掃除機と呼ばれているのよ。窓が汚かったらゆっくりコーヒーを飲めないじゃない」

毎週月曜日は掃除の日、とにかく磨くのが大好きなのだそうです。

「掃除の手伝いをして欲しかったら、いつでも声をかけてね。私は掃除が大好きだから」

いつもそう言ってくれるのは私の家を見ているからでしょうか‥。

窓辺に置かれた小物、テーブルの上に飾られたティーカップとポット、大小さまざまな古い古い時計たち、新しいものはほとんどありません。そのどれもがアンティークショップに置かれてもおかしくないようなもので、一つ一つ丁寧に磨かれています。ご自慢の大きな食器棚は、あけると電気がつくようになっています。オランダの食器棚は扉も木で出来ていて中が見えないものが多いのですが、開いてびっくり、とてもきれいにディスプレイされて、家族の写真まで飾ってあります。

毎日朝夕の散歩も欠かしません。ゆっくりと近くの公園を歩いています。怖い顔をしながら歩いているのですが、私を見つけると顔をくしゃくしゃにして嬉しそうに両手を大きく振りながら、近づいてきます。

友達が訪ねてきたり、訪ねていったり、

「暇にしている時間なんてないのよ」

美しく年を重ねると言うのはこういうことなのかしら。

スージーの存在は私の行く「先」のお手本になるに違いありません。

引越しばかりでなかなか友達が出来ないといつも思っていたのですが、引越しのおかげでいろいろな人と知り合えるというのは、とてもすてきなことです。

 

2002@Miharu Shinohara